名作ですか、知りませんでした。
一人の男が 列車の出発をまっていた。
男は雪曇りの空のような心持ちだった。
だれもいない列車に寛ぎを感じはじめる。
そこに 下駄をならした小娘が乗り込んでくる。
娘は窓を開け、
踏切に待っていた子どもたちに蜜柑を投げた。
あっ、
私の心の上には、切ないほどはっきりと、この光景が焼き付けられた。
そうして、疲労と倦怠感とを、僅かに忘れることが出来たのである。
少女は奉公にに出るのだ。
横須賀線上り列車。
奉公先は・・・。
意外な出来事が、望んでいない事が、
人を慰めたり、変化のきっかけになる。
この本と出合わなかったら、この話を知らないままだっただろうな。
蜜柑を見たら、ふと思い出すかも。
乙女の本棚シリーズ。